不動産経理の仕事内容・年収・転職成功の7ステップを解説
「不動産業界に興味はあるけど、経理ってどんな仕事?」「一般企業の経理と何が違うの?」そんな疑問や不安を抱えていませんか?
特に未経験から不動産経理を目指す方にとっては、専門用語や独自ルールの多さに戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、そんなあなたのために、不動産経理の仕事内容から必要なスキル、転職活動の進め方までをわかりやすく解説します。
- 不動産経理の仕事内容と一般企業との違い
- 年齢・役職別の年収相場やキャリアの広がり
- 必要な資格や活かせるスキルの具体例
- 未経験でも通過できる志望動機と面接対策
- 転職を成功させるための求人動向とエージェント活用術
この記事を読めば、「不動産経理に転職すべきか?」という迷いが、自信ある一歩に変わるはずです。
不動産経理とは?他業界経理との違い
不動産経理が扱う主な勘定科目と取引例
不動産経理では、業界特有の勘定科目を日常的に扱う場面が多く、他業界とは異なる実務スキルが求められます。
- 預り金:賃貸物件の敷金や保証金など、一時的に預かる資金
- 未収入金:テナントからの家賃未収や修繕費の立替分
- 工事未払金:外注工事費などの未払金処理
- 減価償却費:所有物件や設備の償却に関する仕訳
- 不動産販売収益:物件売買による収益認識
これらの勘定科目は、不動産業界独自の契約形態や収益構造を反映しており、会計処理の精度が求められます。
日次・月次・年次業務フロー
不動産経理の仕事は、短期的な入出金処理から長期の決算業務まで多岐にわたります。日次では主に家賃の入金確認や支払処理を行い、月次では物件ごとの収支集計や試算表作成を担当します。
年次業務になると、決算書の作成や法人税の申告対応が発生し、税理士や監査法人との連携が必要になることもあります。
「毎月の賃料処理」だけでなく、「契約変更に伴う収益認識の調整」など、不動産特有の変動要素に対応する柔軟性が重要です。
物件管理会社・デベロッパーでの業務差
不動産経理は、所属する企業の業態によって仕事内容が大きく異なります。たとえば物件管理会社では、家賃や修繕費など毎月の入出金業務がメインになります。
一方で、デベロッパーの場合は、新築物件の建設費用や販売収益に関する仕訳が中心となり、よりプロジェクト単位の収益管理が求められます。
同じ「不動産経理」であっても、現場の動き方や業務の深さが違うため、自分のスキル志向に合う企業選びがポイントです。
不動産経理の平均年収とキャリアパス
年齢・役職別年収レンジ
不動産経理の年収は、年齢や役職、企業規模によって差があります。
- 20代:年収300〜400万円(一般職、担当レベル)
- 30代:年収450〜600万円(主任〜係長レベル)
- 40代以上:年収650〜800万円以上(管理職、課長・部長クラス)
特に上場企業の経理部門やREIT運用会社では、700万円超の高年収も珍しくありません。
管理会計・税務など専門領域への発展
不動産経理として一定の経験を積むと、専門性の高い分野へとキャリアを広げることが可能です。たとえば、複数物件の収支計画を立案し、経営判断に役立つデータを提供する「管理会計」の分野では、事業戦略との連動性が求められます。
また、不動産取引には消費税・登録免許税・不動産取得税など多様な税制が絡むため、税務会計の知見も重要です。資産の譲渡益税務処理や減損会計など、他業界とは異なる対応が必要となります。
単なる帳簿入力にとどまらず、「数字を読み解き、提案できる力」がキャリアアップの鍵となります。
経理から経営企画・CFO候補へのステップ
経理経験を積んだ後は、経営層に近いポジションを目指すことも可能です。特に不動産業界では、物件ごとの収支構造や投資回収のシミュレーションなど、数値分析に基づく意思決定が多く求められます。
この経験は、経営企画やファイナンス部門へのステップアップに直結します。さらに上場企業やスタートアップでは、経理からCFO候補へと昇格する例も増えています。
「数字を動かす側」から「数字で会社を動かす側」へ。不動産経理のスキルは、その第一歩となり得るのです。
不動産経理に求められるスキル・資格
日商簿記2級以上の知識
不動産経理を目指すうえで、日商簿記2級は基礎知識の証明として非常に有効です。特に固定資産の償却処理や税効果会計、連結決算の基本が理解できるレベルが求められます。
実際の求人票でも「日商簿記2級以上」と明記されているケースが多く、未経験者にとっては最低限のアピールポイントとなります。
「資格がないと転職できないのでは?」という不安もあるかもしれませんが、実務での経験や職種理解を補完する材料として資格は活きてくるのです。
宅地建物取引士は必要か?
宅建士の資格は不動産業界全体で重宝されますが、経理職として必須ではありません。ただし、契約書や重要事項説明書の内容理解が求められる場面もあり、知識があればスムーズに業務を進められる利点があります。
特に売買を扱う企業や、社内で部署間連携が多い環境では、宅建士の資格が役立つ場面が多いです。
もし「不動産業界で長く働きたい」と思っているなら、将来的に取得しておいて損はない資格です。
不動産特有の税制・IFRS知識
不動産経理には、他業界にはない独自の税制対応が求められます。たとえば、土地・建物の売却に伴う譲渡所得税、減価償却の方法、不動産取得税や登録免許税の処理などがその代表です。
また、国際的な不動産ファンドや上場REITなどを運営する企業では、IFRS(国際会計基準)に基づく会計処理が必要になる場合もあります。
IFRSでは投資不動産の時価評価や減損処理が導入されており、国内基準とは異なる仕訳や開示の知識が求められます。
「簿記だけでは対応しきれないのでは?」と感じた方は正解です。だからこそ、不動産経理は奥深く、専門職として高く評価されるのです。
使用頻度の高い会計ソフトとITスキル
不動産経理では、「勘定奉行」「PCA会計」「弥生会計」などの汎用会計ソフトが多く使用されます。一方で、REITや大手デベロッパーでは、独自の会計管理システムやERP(SAP、OBIC7など)を導入しているケースも増えています。
また、Excelスキルも非常に重要です。関数やピボットテーブルを活用し、物件別収支や月次推移表を効率よく管理できることが求められます。
- Excel(VLOOKUP、IF関数、ピボットなど)
- クラウド会計ソフトの操作経験
- 社内システムへの入力・マスタ登録作業
ITツールに苦手意識がある方でも、基本操作に慣れておくことで業務の精度とスピードは確実に向上します。
不動産経理の転職市場と求人動向【2025年最新版】
求人数の推移と旺盛なポジション
2025年現在、不動産業界の経理職は安定した求人数を維持しています。特にREIT関連企業や収益物件を多く保有する大手グループでは、経理体制の強化を目的に採用を拡大している状況です。
中でも以下のようなポジションは特に求人が多く見られます。
- 物件別収支管理を行う実務担当者
- 連結決算・税務対応の経験者
- IPO準備中のスタートアップ企業での経理マネージャー
経理という職種はどの業界でもニーズがありますが、不動産経理は「業界特化型」の希少性により、比較的高待遇での募集が出やすい傾向があります。
上場REIT・デベロッパー・管理会社それぞれの採用傾向
不動産経理の求人は、企業の業態によって採用基準や求める人物像に違いがあります。
- 上場REIT:会計基準に基づく正確な開示資料作成や、投資家対応を見据えた経験者が優遇される
- デベロッパー:プロジェクト単位での収支管理や開発原価の計算など、実務対応力が重視されやすい
- 管理会社:オペレーション寄りの経理(入出金管理・原価処理)が中心で、柔軟性やスピード感が求められる
同じ「不動産業界」でも、扱う業務の粒度や求められる視点が異なるため、転職時には「どの業態で経験を積みたいか」を明確にしておくことが重要です。
在宅勤務・フレックスなど働き方の変化
不動産業界でも徐々に柔軟な働き方が広がってきています。特に大手REIT運営会社や一部上場企業では、在宅勤務や時差出勤、フレックスタイム制を導入している企業が増加中です。
一方で、管理会社など現場とのやり取りが多いポジションでは、出社が前提となるケースも根強く残っています。
求人を選ぶ際には、「働き方の自由度」や「リモート対応の可否」を確認しておくと、自分に合ったワークライフバランスを実現しやすくなります。
未経験から不動産経理へ転職する方法
求められる実務経験と代替アピールポイント
未経験から不動産経理に転職する場合、実務経験がないことをどうカバーするかがポイントです。以下のような経験やスキルが評価される傾向があります。
- 一般企業での経理経験(売掛・買掛処理、月次決算など)
- 不動産業界での営業・事務経験(業界理解があることが強み)
- 簿記2級や宅建士などの資格取得済み
「経理業務自体が未経験」という場合でも、数字に強い、正確性を重視する、などの適性をアピールすることで、ポテンシャル採用を狙えるケースもあります。
自信がない方でも、「なぜ不動産経理なのか」を語れるエピソードがあると選考を突破しやすくなります。
応募書類で差を付ける自己PR・志望動機例
未経験から不動産経理を目指す際は、書類選考の突破が大きな関門です。ポイントは、「なぜ経理職なのか」だけでなく、「なぜ不動産業界で経理をやりたいのか」まで深掘りすることです。
たとえば、以下のような構成で自己PRをまとめると説得力が増します。
- 前職で培った数字への意識や業務管理スキル
- 簿記資格取得の経緯と学習姿勢
- 不動産業界への関心や身近な体験
志望動機では「地元密着型の不動産管理会社で、地域に根ざした会計業務を通じて信頼を築きたい」といった、企業ごとの特徴に紐づいた具体性を出せると好印象です。
面接でよく聞かれる質問と回答例
不動産経理の面接では、業界知識と基本的な経理理解を問う質問が多くなります。特に未経験者には以下のような質問が多く見られます。
- 「なぜ不動産経理を選んだのか?」
- 「経理の経験がない中で、どうやってキャッチアップするつもりか?」
- 「宅建士や簿記資格を業務にどう活かしたいか?」
これらに対しては、自分の過去の経験を絡めて「数字管理に興味を持った背景」や「不動産業界への具体的な動機」を交えて話すと、前向きな姿勢をアピールできます。
また、「未経験でも吸収力や改善意識がある」と伝えることで、ポテンシャル採用の期待値が高まります。
不動産経理の転職を成功させるポイント
履歴書・職務経歴書の書き方のコツ
履歴書では、志望動機と資格を簡潔かつ具体的に書くことが重要です。未経験の場合、職務経歴書で前職の業務内容を「数字管理」「正確性」「改善」など経理と親和性の高いキーワードで表現することを意識しましょう。
- 売上管理、仕入れ調整などの数値業務
- Excelでの集計業務
- 書類作成・ファイリングの正確性
たとえ経理経験がなくても、日々の業務で「数値を扱う感覚」があることをアピールできれば、採用担当者の評価が変わります。
年収交渉を有利に進めるタイミング
不動産経理職の転職において、年収交渉のタイミングは非常に重要です。一般的には内定提示時に給与条件が示されますが、その段階で一度のみ交渉のチャンスがあります。
「即戦力として業務に貢献できること」や「不動産業界での経験」「簿記・宅建士などの資格保有」などを根拠に交渉すると、説得力が増します。
ただし、強気な姿勢だけではなく、「御社で長く働きたいからこそ適正な条件でスタートしたい」と伝えることで、柔らかい印象を与えることができます。
入社後ギャップを防ぐ企業リサーチ方法
入社後のミスマッチを防ぐには、転職前に企業理解を深めることが欠かせません。特に不動産経理は企業によって業務範囲が大きく異なるため、求人票だけでは見えない実態を掴む必要があります。
- 企業HPでの物件紹介や決算公告を確認
- 口コミサイトでの実務ボリュームや社風のチェック
- 転職エージェント経由での内部情報ヒアリング
「月次決算まで」や「年次業務含む」など、業務範囲に関する表記の意味を正確に読み取ることが大切です。思い描くキャリアに合うかどうか、丁寧なリサーチがカギになります。
不動産経理に強いおすすめ転職エージェント5選
大手総合型 vs. 特化型の違い
転職エージェントには、業界全体を広く扱う「総合型」と、不動産や経理など特定分野に強い「特化型」があります。
大手総合型(例:リクルート、doda)は求人数が豊富で、非公開求人にも出会いやすいのが特徴です。一方、特化型(例:MS-Japan、ジャスネットキャリア)は専門知識に基づいた提案やサポート力が魅力です。
未経験からの挑戦なら総合型、即戦力としてのキャリアアップなら特化型というように、自分のフェーズに応じて使い分けるのが効果的です。
エージェントを上手に活用する3つのステップ
- 複数登録で比較検討:2〜3社登録して担当者との相性を見極める
- 希望条件を明確に伝える:年収・勤務地・職種などを事前に整理
- 定期的なやり取り:レスポンスの早さが紹介数や質にも影響
エージェントは「選ぶ側」であると同時に「選ばれる側」でもあります。信頼関係を築くことで、より良い提案を引き出すことが可能になります。
よくある質問(FAQ)
不動産経理は忙しい?残業時間の実態
不動産経理の業務量は企業規模や業態によって異なりますが、繁忙期には残業が発生しやすい傾向があります。特に月末月初の締め処理や決算期(3月・9月など)には、時間外勤務が増えるケースも見られます。
- 管理会社:月20時間前後が一般的。業務は比較的ルーティン
- デベロッパー:プロジェクト単位の業務で残業が偏る傾向
- 上場企業:決算報告や監査対応で一時的に繁忙になることも
働きやすさを重視する場合は、「残業平均時間」や「決算期の体制」などを事前に確認するのがおすすめです。
経理から財務・税務へスキルチェンジできる?
はい、可能です。実際に経理経験をベースに、財務分析や資金調達を担うポジションへステップアップする例は多数あります。
特に不動産業界では、物件の取得や売却に関連する資金管理やキャッシュフロー分析が重要なため、経理出身者が財務部門で重宝されやすい傾向にあります。
税務面では、消費税・固定資産税など不動産特有の知識があると、会計事務所や企業内税務担当としてのキャリアにも広がります。
建設業経理士と迷ったときの選び方
「不動産経理」と「建設業経理士」、どちらを選ぶべきか迷う方も多いですが、目指す業界によって最適な選択が異なります。
- 建設業界(ゼネコン・工務店)を目指すなら建設業経理士
- 不動産業界(管理会社・デベロッパー)を目指すなら日商簿記+業界知識
建設業経理士は工事台帳や原価管理に特化した資格で、建設業法との関連が強いのが特徴です。一方で不動産経理は幅広い会計処理に対応する必要があるため、まずは日商簿記2級を取得し、業界経験を積みながら知識を深めるのが王道です。
将来的にどちらの業界に軸足を置くかによって、選ぶべき資格や経験が変わってきます。
まとめ:不動産経理の転職成功には専門性と準備がカギ
不動産経理への転職を成功させるには、業界特有の知識を理解し、自分の経験やスキルと結びつけてアピールすることが重要です。
なぜなら、他業界の経理と異なり、不動産経理では契約形態や税制、収益構造などに独自性があり、それに対応できる即戦力が求められるからです。
- 不動産経理では預り金や減価償却などの特殊な会計処理を扱う
- 業務内容は物件管理会社・デベロッパー・REITで大きく異なる
- 簿記や宅建士、IFRS対応などの資格がキャリアの後押しに
- 未経験者でも職務経歴書の工夫や志望動機の説得力で突破可能
- 転職エージェントや企業リサーチを活用することでギャップを防げる
不動産経理は専門性の高い職種でありながら、企業によって業務の深さや働き方にも違いがあります。だからこそ、転職前の準備と情報収集が差を生むポイントです。
本記事を通じて、不動産経理職の全体像と求められるスキル、転職戦略を明確にし、後悔のないキャリア選択へとつなげていただければ幸いです。