2025.06.12

税理士のM&A転職ガイド｜年収・スキル・成功事例を徹底解説

yoshiharu

「このまま税理士を続けていていいのか」「もっと成長できる環境はないのか」──そんなモヤモヤを抱えていませんか？

近年、税理士資格を持つ方の間で注目されているのが、M&A業界へのキャリアチェンジです。

税務・会計の専門知識を活かしながら、よりダイナミックで戦略的な仕事に携われるため、転職後に飛躍する方も増えています。

とはいえ、こんな疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか？

M&A業界って未経験でも入れるの？
年収や働き方はどう変わるの？
税理士資格が本当に活かせるのか知りたい
どんな職種や企業が向いているのか分からない
面接や書類で何をアピールすれば良いのか不安

この記事では、税理士がM&A業界で活躍できる理由から、活かせるスキル、職種別の役割、年収相場、転職成功事例までを網羅的に解説します。

転職を少しでも考えている方にとって、次の一歩が明確になる内容になっています。

Contents

M&A業界が税理士を求める背景と市場規模
税理士がM&A業界で活かせる専門スキル
M&A業界の主な職種と税理士の役割
税理士がM&A業界へ転職するメリット・デメリット
最新求人動向と応募チャネルの選び方
志望動機・自己PRの作り方
必須資格・語学力・学習ロードマップ
転職プロセス完全チェックリスト
年収・待遇のリアル
成功事例＆キャリアパスの実例紹介
よくある質問（FAQ）
まとめ：税理士の専門性はM&A業界で確実に武器になる

M&A業界が税理士を求める背景と市場規模

事業承継ニーズ拡大と案件数の増加

結論から言えば、M&A業界で税理士のニーズが高まっている最大の理由は「事業承継案件の急増」にあります。

中小企業経営者の高齢化が進む中、後継者不在による廃業リスクが社会課題として浮上しており、M&Aが企業存続の有力な選択肢となってきました。

実際、事業承継型のM&Aは近年増加の一途をたどっており、特に地方の中小企業においては「後継ぎ問題の解決策」として定着しつつあります。

このような流れの中で、中小企業の実情に明るい税理士の専門性が強く求められています。財務状況を把握し、経営者と密に関わってきた経験は、M&Aアドバイザリーにおいて大きな強みです。

「営業経験がないから不安…」という方も多いですが、M&Aの現場では売り込みよりも「経営者の想いに寄り添い、選択肢を示す力」が重視されます。税理士ならではの傾聴力や論理的思考が活かせる領域です。

税務・会計の専門知識を持つ即戦力需要

税理士資格を持つ人材は、M&A業界において即戦力として高く評価されています。

なぜなら、M&Aに不可欠な財務デューデリジェンスやバリュエーションといった業務では、財務・会計・税務の深い理解が前提となるからです。

FASでの財務・税務デューデリの実施経験
中小企業の決算書からの論点抽出スキル
グループ内再編や株式交換時の税制対応

さらに、M&A仲介会社やコンサルティングファームでは、税理士が税務戦略の策定やスキーム設計に携わるケースも増えてきました。

「会計士の方が向いているのでは？」と感じる方もいるかもしれませんが、税務面での助言や中小企業の実務対応力では、税理士のほうがアドバンテージを持つ場面も多いのです。

コロナ後の統合・再編ブームと採用トレンド

2020年以降、新型コロナウイルスの影響を受けた企業の多くが、再編・統合を余儀なくされる事態となりました。

このような背景の中、M&A市場では「買収側に有利な時代」とも言えるほど、売却ニーズが増加しています。

特に注目されているのは、業界再編に伴うスキーム設計や、税務面を加味した最適なストラクチャーの構築です。ここで税理士の知見が活きる場面は少なくありません。

複雑化する資本政策の理解
業種別特有の規制や制度への対応
買収・統合に伴う税務コストの最適化

最近では、Big4税理士法人だけでなく、中堅ブティック系FASや地域密着型M&A会社などでも、税理士の採用を積極的に進めています。

「未経験だけど応募して大丈夫？」という声もありますが、M&A業界では“ポテンシャル採用”も活発で、特に会計・税務の基礎力がある人材には門戸が広く開かれています。

税理士がM&A業界で活かせる専門スキル

財務デューデリジェンス（FDD）の実務経験

結論から言えば、税理士がM&A分野で即戦力として認められる最大の要因は、財務デューデリジェンス（FDD）における実務対応力にあります。

FDDとは、買収対象企業の財務情報を精査し、リスクや適正価格を判断するプロセスのこと。ここで求められるのは、財務諸表の分析力だけでなく、現場ヒアリングを通じて数字の裏にある実態を読み解く力です。

例えば、売掛金の未回収リスクや、棚卸資産の評価妥当性、役員報酬の過大性といった論点を洗い出し、レポートにまとめてクライアントに示す必要があります。

会計士に比べて、税理士は中小企業との接点が多く、実態に即した視点で問題点を指摘できる傾向があり、特に地方案件では重宝されることが増えています。

「監査経験がないからFDDは無理かも…」と思う必要はありません。税務顧問としての知見をうまく転用すれば、FDD業務の素地はすでに備わっているのです。

組織再編税制・グループ通算制度の知識

組織再編税制やグループ通算制度の知識は、税理士がM&A業界で重宝されるもう一つの大きな武器です。

これらはM&Aにおけるスキーム設計に密接に関わっており、事業の譲渡、合併、会社分割、株式交換など、各手法における税務リスクの評価や最適な実行方法を考えるうえで必須の知識です。

適格・非適格の判定とその税務インパクト
繰越欠損金の引き継ぎ可否
資本等取引の整理と税務調整の必要性

特にグループ通算制度では、2021年4月以降に導入された新ルールへの理解と対応が求められており、制度設計やタックスプランニングの場面で税理士の出番が増えています。

「通算制度は苦手…」という方も多いですが、基礎的な論点の理解と応用力があれば、現場でのアドバイスや検討業務にしっかり対応可能です。

国際税務・クロスボーダー取引への対応力

近年、クロスボーダーM&Aの増加に伴い、国際税務に対応できる人材へのニーズが高まっています。

特に海外進出企業による買収や、外国企業による日本法人の買収では、PE課税・移転価格税制・タックスヘイブン対策税制といった複雑な税務論点が頻出します。

税理士として以下のような対応力を備えていると、外資系FASやグローバル案件を扱うファームでの評価が高くなります。

移転価格文書作成やBEPS対応の実務経験
外国税額控除やタックスヘイブン税制の理解
英文契約書のレビューや国際税務アドバイザリー

語学力がネックになることもありますが、実務では専門用語の理解と税務理論の正確な適用が重視されるため、初級〜中級レベルの英語でも業務遂行は可能です。

「英語は苦手だけど挑戦したい…」という方は、まずは国内外資系ファームやASEAN向け案件などから経験を積むのが良いでしょう。

M&A業界の主な職種と税理士の役割

M&Aアドバイザリー／仲介でのバリュエーション業務

M&A仲介会社やアドバイザリーファームにおいて、税理士が活躍する代表的な業務が「バリュエーション（企業価値評価）」です。

この業務では、買収希望企業に対して対象会社の財務状況を分析し、DCF法・マルチプル法・類似会社比較法などを用いて適正な評価額を算出します。

税理士が強みを発揮するのは、単なる数値の分析にとどまらず、会計方針や業種特性を踏まえた実態把握、さらには税務影響まで考慮したアドバイスです。

非上場企業の調整後EBITDA算出
粉飾・赤字補填の兆候を見抜くスキル
税負担率の異常値に基づくストーリー構築

「数式やモデル作成に自信がない…」という方でも、エクセル操作よりも“数字の背景を読み取る力”が評価されるため、税務顧問業務で培った視点が大きく役立ちます。

FAS・コンサルティングファームでのストラクチャー検討

FAS（ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス）や大手コンサルティングファームでは、税理士が「取引ストラクチャーの設計」に関与する場面が増えています。

この業務では、M&Aのスキームごとに発生する税務インパクトを評価し、最も合理的かつ税効果の高い手法を提案することが求められます。

たとえば、株式譲渡・事業譲渡・会社分割といった手法の違いによって、売手・買手双方の課税関係や将来の税務戦略が大きく変わってくるため、それらを総合的に判断する力が必要です。

税理士としての経験が活きる場面は多く、特に以下のような力が求められます。

取引スキームごとの税務リスク分析
適格・非適格判定と繰越欠損金の活用策
連結納税制度（現・グループ通算制度）の活用助言

税務の専門性に加え、事業再編の背景や経営戦略を理解したうえで論理的に構成を組み立てる能力が求められるため、税理士業務では経験できなかった「上流工程」の魅力を実感できる分野です。

インハウスM&A（事業会社）の税務戦略ポジション

近年では、上場企業や急成長中のベンチャー企業が、自社内にM&A担当チームを設ける「インハウスM&A」の動きが活発化しています。

この中で税理士が活躍するのが、事業買収・子会社再編・PMI（統合後マネジメント）などに伴う税務戦略の立案や、スキーム実行支援の役割です。

たとえば、買収後のグループ通算制度への組み込み方、タックスシールドの最大化、のれん償却による節税プランなど、単なる申告業務ではない「戦略的な税務提案力」が求められます。

このポジションでは以下のようなスキルが歓迎されます。

法人税・消費税に関する高度な実務知識
買収検討時の税務リスク評価経験
経理部門や法務部門との連携能力

「士業→事業会社」というキャリアは意外に思われるかもしれませんが、安定性や働き方の自由度、経営の近くで実務ができる点で注目が集まっている転職ルートのひとつです。

税理士がM&A業界へ転職するメリット・デメリット

年収レンジとインセンティブの仕組み

税理士がM&A業界に転職する最大の魅力のひとつは、年収アップの可能性です。

特に成果報酬型のM&A仲介会社では、案件成約ごとに高額なインセンティブが支給される仕組みになっており、実力次第で年収1,000万円〜2,000万円超も現実的です。

基本給＋月間インセンティブ＋通期賞与の構成
業界大手では成約1件で300万円〜500万円超の報酬実績も
FASや税理士法人では固定給ベース＋決算賞与が主流

一方、インセンティブが成果連動型である分、安定性に欠けるという面もあるため、自分に合った給与体系を見極めることが重要です。

「年収が大きく上がるって本当？」という疑問には、業界や職種による差はあるものの、税理士からの転職者の多くが年収増を実現しているのが実情です。

ハードワーク／高難度案件に伴うキャリアリスク

M&A業界における業務は、成果主義であるがゆえにハードワークになりがちです。

案件の進行はクライアント企業のスケジュールに大きく左右され、土日・夜間の対応も発生するため、ライフワークバランスを重視する人には向いていない側面もあります。

また、高額な金銭が動くM&Aは一つの判断ミスが重大なリスクを招くため、精神的なプレッシャーも少なくありません。

たとえば以下のような局面では、正確性とスピードを両立させる能力が求められます。

デューデリ中の財務リスク報告
ストラクチャー変更に伴うシミュレーション再作成
クロージング前の税務・法務最終確認

「プレッシャーに弱いかも…」という人は、まずFASなどのサポート職種から経験を積むのがおすすめです。

専門領域拡大による市場価値と将来の選択肢

M&A業界に転職することで、税務の枠を超えたスキルを身につけることができ、市場価値が大きく高まります。

実際、以下のようなキャリア展開が可能になります。

FASからPEファンドのバリューアップ担当へ
M&Aアドバイザーから経営企画職への転身
インハウスM&Aから独立開業・M&Aコンサルへ

これにより、税務申告の受託型から「経営者のパートナー」としての提案型キャリアへとシフトでき、長期的に柔軟な働き方や収入構造を設計しやすくなります。

「今のままで将来が不安…」という方ほど、M&Aへの挑戦は視野に入れる価値があります。

志望動機・自己PRの作り方

税務専門性をM&Aバリューへ結び付けるフレームワーク

M&A業界への志望動機を語る際には、「なぜ税理士の道から転じるのか？」という疑問に明確なロジックをもたせることが重要です。

そこで有効なのが、「自分の専門性 × M&Aの価値創造」というフレームワークです。たとえば以下のように構成すると、論理的かつ熱意のある印象を与えることができます。

【課題意識】顧問先の事業承継に関与する中で、M&Aの選択肢の必要性を痛感
【自分の強み】中小企業の税務支援を通じた実態把握と、経営者との信頼関係構築力
【将来像】M&Aの現場で税務知見を活かし、企業の持続的成長と雇用維持に貢献したい

特に「税理士としての経験を一段深めたい」という前向きなキャリア志向を強調すると、未経験転職でも説得力が高まります。

案件実績・定量成果のストーリーテリング例

自己PRにおいては、単なる業務内容の羅列ではなく、「成果」を数字で示し、かつその背景にあるストーリーを語ることで印象が大きく変わります。

以下は実績アピールの型として使える一例です。

【Before】後継者不在の顧問先に対して相続・株価対策を実施
【Action】会社分割と持株会社化スキームを提案し、税務メリットを試算
【Result】結果として顧問契約継続＋グループ法人から新規依頼を獲得（年間売上＋300万円）

このように、「問題 → 行動 → 成果」の流れを意識し、ストーリー仕立てで語ることで、再現性と実務能力を印象付けることができます。

面接で差がつく「将来像」とキャリアプラン提示

M&A業界の面接では、志望動機の深さだけでなく、「5年後・10年後にどんなプロフェッショナルになりたいか」が問われることが多いです。

そのため、将来像を語る際は、以下のように段階的なステップを示すと説得力が増します。

「まずはFDDやストラクチャー設計などの基礎業務を通じて実務理解を深め、3年以内にプロジェクトマネジメントを任される立場を目指したい。その後は、中堅企業の事業承継M&Aを中心に、税務面からバリューを生み出すアドバイザーとして独立・起業も視野に入れている」

このように、成長意欲と論理的なキャリア設計が伝わると、採用側からも「この人と一緒に成長できそう」という印象を持たれやすくなります。

必須資格・語学力・学習ロードマップ

公認会計士・USCPAとの比較優位性

M&A業界では公認会計士やUSCPAの採用も多く、「税理士として不利では？」と感じる方も少なくありません。

確かにFASや監査法人系のファームでは会計士資格が求められることが多いですが、税理士にも独自の強みがあります。

事業承継・組織再編・グループ通算制度などの税務に精通
中小企業との長期的な関係構築に基づいた実務的アプローチ
税務リスクの洗い出しやスキーム選定時の調整力

特に事業承継型M&Aや地方案件では、税理士の存在感が増しており、会計士とは異なる切り口でバリューを提供できる存在として重宝されています。

モデルケースで見る英語力強化ステップ

クロスボーダーM&Aや外資系ファームでの活躍を目指す場合、英語力は武器になります。

とはいえ、最初から高い語学力が必須というわけではありません。多くの実務家は、段階的にスキルを伸ばしています。

たとえば、次のようなロードマップが参考になります。

Step1：英単語帳で会計・税務関連の用語に慣れる
Step2：日英対訳の財務諸表・契約書を読み込む
Step3：オンライン英会話で業務説明の練習を行う
Step4：実務で英文メール作成・会議に参加して経験を積む

「英語ができないから無理かも…」と諦めるのではなく、目指すポジションに応じた語学力を段階的に高めていく姿勢が重要です。

財務モデリング・バリュエーション講座の選び方

M&A業界でのキャリアアップを目指すなら、「財務モデリング」や「バリュエーションスキル」の習得は避けて通れません。

税理士としての会計知識を活かしつつ、モデル構築やシナリオ分析を行うスキルは、FAS・アドバイザリー業務で重宝されます。

以下のような講座は、初心者からでも取り組みやすく、実践力が身につきやすい内容となっています。

グロービスやKEIRO Academyのモデリング基礎講座
スタディングやUdemyで学べるDCF法・マルチプル法
英語学習と並行して、英語字幕付きモデル講座もおすすめ

座学よりも「手を動かして学ぶ」姿勢が問われる分野なので、アウトプット型のカリキュラムを選ぶことが成功のカギです。

転職プロセス完全チェックリスト

エージェント登録〜内定までのタイムライン

M&A業界への転職活動は、戦略的にスケジュールを立てることが成功のカギとなります。

特に税理士としてのキャリアから転職を目指す場合、繁忙期や実務状況との兼ね合いを考慮して余裕をもった準備が必要です。

以下は一般的なタイムラインの一例です。

1ヶ月目：業界研究＋特化型エージェント登録
2ヶ月目：書類作成＋企業ごとの対策開始
3〜4ヶ月目：1〜3社程度の面接実施＋内定取得
5ヶ月目：退職手続き＋入社準備

なお、M&A業界では選考期間が比較的短く、1ヶ月以内に最終面接〜内定となるケースも多いため、準備段階での情報整理が特に重要です。

職務経歴書・レジュメで落ちない基本構成

M&A業界では、書類選考の段階で「再現性」と「論理性」が特に重視されます。

税理士としての職務経歴を伝える際には、以下のようなポイントを押さえて構成しましょう。

【業務概要】どの規模・業種の企業を対象に、どのような業務を行ってきたか
【専門性】法人税・組織再編・事業承継など、自身の強み領域を明確化
【成果】定量的な実績（売上・改善率・件数）とクライアント評価
【転職理由】税理士スキルをM&Aで活かしたいという一貫したロジック

「書類で通過しない…」という場合は、エージェントにレビューを依頼するのが確実です。業界ごとの評価ポイントを熟知しており、適切な言い換えや構成提案を受けることができます。

最終面接・オファー面談での交渉術

最終面接では、志望動機と同様に「カルチャーフィット」と「成長意欲」が重視されます。形式的な応答に終始せず、自身の価値観や仕事観を交えた話ができると、面接官に好印象を残せます。

オファー面談では年収やポジションのすり合わせが行われるため、条件交渉の準備も欠かせません。

以下のような対応が有効です。

希望年収の提示根拠（現年収・業界相場・自分の強み）を整理
交渉ではなく「確認」という姿勢で穏やかに要望を伝える
複数社から内定がある場合は、比較軸を明確にしたうえで交渉

税理士業界から初めて異業種に挑戦する場合、「提示された条件＝最大」と思いがちですが、交渉余地は十分あります。

後悔のない転職を実現するためにも、内定後の段階まで見据えた準備を整えておきましょう。

年収・待遇のリアル

職位別・ファーム別の年収テーブル

M&A業界の報酬水準は、所属するファームや職位によって大きく異なります。

税理士として転職する場合、初年度から大幅な年収アップを実現するケースもあれば、スキル習得期間を経て徐々に上昇していくモデルもあります。

Big4 FAS：アナリスト600万円〜／シニア800〜1,200万円
M&A仲介会社：ベース500〜700万円＋歩合で年収1,500万円超も
インハウスM&A（事業会社）：管理職で800〜1,200万円程度

特に仲介系ではインセンティブ比率が高く、成功報酬型の年収構成になります。一方でFASやインハウスでは安定した固定給が基本で、パフォーマンス次第で賞与が上乗せされる形式が一般的です。

成果連動インセンティブ／固定給のバランス

税理士がM&A業界に転職する際には、「固定給 vs 成果報酬型」のバランスを理解しておくことが重要です。

たとえば仲介会社では、案件成約1件あたりの報酬が数百万円に上ることもあり、年収の半分以上がインセンティブで構成されることも珍しくありません。

一方で、案件が成立しない期間が続けば収入が安定しないというリスクもあり、ライフステージや性格によって向き不向きがあります。

「安定性を取りたい」人にはFASやコンサル系、「実力で稼ぎたい」人には仲介・PEファンドが向いていると言えるでしょう。

ワークライフバランスと福利厚生比較

M&A業界は高収入が期待できる反面、激務のイメージがあるのも事実です。しかし、実際の働き方は企業文化やポジションによって大きく異なります。

FAS：繁忙期は多忙だが、裁量勤務やリモート制度が整備
仲介：成果主義ゆえに稼働時間が長くなりがちだが、柔軟性も高い
事業会社：土日休み・残業少なめのポジションも多い

福利厚生についても、大手ファームでは家賃補助・教育制度・語学研修などが充実しており、長期的なスキルアップにも適した環境です。

「収入だけでなく生活も大事にしたい」と考える方は、業務内容だけでなく企業の文化や制度面も重視すると良いでしょう。

成功事例＆キャリアパスの実例紹介

30代科目合格者がFASへ転職したケース

30代前半で科目合格のみ、実務経験は税務顧問中心だったAさんは、「よりダイナミックな仕事に挑戦したい」との思いからFASへの転職を決意しました。

最初はM&A未経験で不安もありましたが、面接では以下の点をアピールし、見事内定を獲得しました。

中小企業への提案経験を通じた実務力
税務調査対応や株価算定などの応用スキル
税理士法人内でのプロジェクト型業務への対応力

現在は財務デューデリジェンスチームの一員として活躍中。数年後にはクロスボーダー案件への関与も見据えて、英語力向上にも取り組んでいます。

税理士法人→M&A仲介で年収2倍を実現した事例

Bさんは税理士法人にて10年間勤務し、資産税や法人顧問を中心にキャリアを積んできました。

顧問先経営者との信頼関係構築に強みを持っていたことから、より「経営に踏み込んだ提案ができる仕事をしたい」とM&A仲介への転職を決意。

初年度は慣れない営業やKPIに苦労しながらも、1年で3件の成約を達成し、年収は税理士法人時代の約2倍に。

現在はマネージャー職としてチーム運営や後進育成にも携わっています。

地方勤務から東京本社M&A部門へ異動したパターン

Cさんは地方の税理士事務所で相続税申告や法人決算業務を中心にキャリアを積んでいましたが、今後の市場縮小に不安を感じ、都市部でのキャリア構築を検討。

特化型エージェントの紹介で、東京の大手M&A仲介会社のアシスタントポジションに応募し、無事内定。

最初は補佐的な業務からスタートしましたが、税務の正確さとクライアント対応の丁寧さが評価され、現在はシニアコンサルタントとして地方案件の開拓にも携わっています。

よくある質問（FAQ）

未経験でも応募できるポジションはある？

はい、税理士資格を持っていれば、M&A実務が未経験でも応募できるポジションは多数存在します。

特にM&A仲介会社やFASでは、「税務・会計の専門性があり、今後の成長意欲がある人材」を積極的に採用する傾向にあります。

仲介：営業適性を重視するため、コミュニケーション力が強みになる
FAS：FDDやストラクチャー設計のポテンシャル人材枠がある
税理士法人：M&Aタックスチームでの育成枠が増加中

「知識がないから不安…」という方も、入社後の研修やOJT体制が整っている企業を選べば、安心してチャレンジできます。

税理士登録継続と実務要件はどうなる？

M&A業界へ転職した場合でも、一定の条件を満たせば税理士登録を継続することは可能です。

特にFASや税理士法人内のM&A部門であれば、「税務業務」に該当する業務があるため、実務要件を満たすことができます。

ただし、M&A仲介会社など純粋な民間企業に転職する場合は、登録の継続や更新のための届出が必要なケースもあるため、事前に税理士会や勤務先に確認するのが確実です。

「登録はどうなるの？」という疑問には、業務内容に応じて調整可能と覚えておくと良いでしょう。

複数内定時に企業を見極めるポイントは？

複数の内定を得た場合、年収やポジションの比較に加えて、以下の観点で企業文化を見極めることが重要です。

働き方：労働時間・リモート可否・裁量の有無
評価制度：成果主義か年功序列か、定量評価の仕組みがあるか
成長環境：OJT・研修体制、業務の幅や深さ

また、実際に働いている社員の雰囲気や、経営陣の考え方を確認するために、面談や職場見学を依頼するのも有効です。

「どこに決めればよいかわからない…」と迷うときは、エージェントと一緒に長期的なキャリア視点で整理してみましょう。

まとめ：税理士の専門性はM&A業界で確実に武器になる

結論から言えば、税理士として培ってきた専門知識と実務経験は、M&A業界で確実に通用し、さらなるキャリアアップや年収向上を実現できる強力な武器になります。

その理由は、M&Aという業務領域が財務・税務・法務といった高度な専門性を求める分野であり、特に中小企業の事業承継や組織再編においては税理士の知見が不可欠だからです。

事業承継ニーズの増加で税務に強い人材への需要が拡大
FASや仲介会社など幅広い職種で即戦力として活躍できる
未経験でも転職可能なポジションが多く、育成体制も整備
高年収・キャリア多様性・成長環境という3拍子がそろう
英語・モデリングなどのスキル強化で将来の選択肢が倍増

つまり、税理士がM&A業界に挑戦することは「専門性を深化させる」だけでなく、「新たなフィールドで社会的な価値提供を果たす」キャリア選択でもあります。

「このままでいいのか…」と悩んでいる方にこそ、M&Aという新たな一歩を踏み出す価値があると言えるでしょう。

#M&A #税理士

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