外国人の転職で必要な手続き7選|ビザ・届出・申請の流れを徹底解説
「外国人として日本で働いているけど、転職したい。でもビザや書類の手続きって正直よく分からない…」
そんな悩みを抱えていませんか?
日本で働く外国人にとって、転職はチャンスであると同時に、在留資格や届出のルールを守る必要がある慎重なステップでもあります。
実際、以下のような疑問や不安を抱える方が多くいます。
- 在留資格は転職先の仕事内容に合っているのか
- 転職後に入管へ何を届け出ればいいのか
- 就労ビザの更新や変更が必要になるケースとは?
- 転職したら社会保険や税金の手続きはどうするの?
- 違反したらビザ取り消しになるって本当?
この記事では、外国人が日本で転職する際に必要な手続きや注意点を、実際のフローに沿ってわかりやすくまとめました。
初めての転職でも安心して進められるよう、各ステップを丁寧に解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
外国人転職手続きの流れと全体像
転職前に確認すべき在留資格と就労範囲
日本で働く外国人にとって、転職前に「今の在留資格でどんな仕事ができるか」を確認することは非常に重要です。
在留資格ごとに許可される仕事内容が異なり、資格と一致しない職務に就くと不法就労と見なされるリスクがあります。
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニアや翻訳・マーケティングなど
- 特定技能1号:介護・外食・建設など、業種が限定されている
- 留学・配偶者ビザ:原則として就労不可、別途許可が必要
例えば、「飲食店のホールスタッフに転職したいけど在留資格は『技術・人文知識』」という場合、資格の変更が必要です。
迷ったときは、行政書士や専門窓口に相談することで適切な判断ができます。
届出・申請の種類と提出先一覧
外国人が転職する際には、いくつかの公的手続きを行う必要があります。
以下は代表的な届出とその提出先です。
- 契約機関に関する届出:転職・退職後14日以内に入管へ提出
- 就労資格証明書の申請:職種が変わる場合に入管へ申請
- 在留資格変更申請:転職後の業務が現在の資格でカバーできない場合に必要
- 外国人雇用状況届出:雇用企業がハローワークへ提出
これらに加え、住民票や税金、社会保険の手続きも関わってくるため、全体を一覧で把握しておくと漏れなく対応できます。
「どこに、いつまでに、何を提出するのか」が明確になると、転職準備もスムーズに進められます。
必須の届出「契約機関に関する届出」とは
提出期限と対象となる在留資格
「契約機関に関する届出」は、外国人が転職・退職した際に必ず行うべき手続きです。
この届出は、現在の在留資格で働いていた会社との雇用関係が終了したこと、または新しい雇用関係が始まったことを、出入国在留管理庁(入管)に届け出るものです。
- 提出期限:転職・退職から14日以内
- 対象者:就労可能な在留資格を持つ外国人(例:技術・人文知識・国際業務、高度専門職、特定技能など)
- 対象外:永住者、日本人の配偶者等など、一部在留資格は届出不要
この届出を怠ると、最悪の場合は「在留資格の取消し」などの不利益を受けることがあります。
転職が決まったときはもちろん、退職だけの場合も忘れずに14日以内の手続きを行いましょう。
オンライン・郵送・窓口提出の方法
契約機関に関する届出は、本人の状況に応じて3つの方法で提出が可能です。
- オンライン提出:出入国在留管理庁の電子届出システム「e-Notification」から提出可能(マイナンバーカードなどが必要)
- 郵送提出:届出様式をダウンロード・記入し、入管へ郵送
- 窓口提出:最寄りの地方出入国在留管理局に直接持参
最も手軽なのはオンラインですが、初回利用にはID登録などの準備が必要です。
忙しい中でも「届出の方法を選べる」点は大きなメリット。確実な方法を選び、期限内の対応を忘れずに行いましょう。
届出書作成のポイントと記入例
契約機関に関する届出書は、記入ミスや漏れがあると再提出が必要になることもあります。
正確に作成するために、以下の点に注意しましょう。
- 会社名・住所・代表者名などは正確に記載(登記簿や雇用契約書で確認)
- 退職・採用の日時は西暦で明記(記入ミスが多い項目です)
- 在留カード番号・在留資格名も忘れずに
入管の公式サイトには記入例も掲載されているため、不安な場合は参照しましょう。
「初めて書く書類で不安…」という方は、行政書士に相談すれば代行作成も可能です。
就労ビザの変更・更新が必要なケース
職務内容が在留資格の範囲を超える場合
転職先での業務内容が、現在の在留資格で認められた範囲を超える場合は、在留資格の「変更」が必要です。
たとえば、「通訳」として働いていた人が、ITエンジニアとして転職する場合、両者の職種は「技術・人文知識・国際業務」に該当するとはいえ、判断が分かれるケースがあります。
明らかに職種が異なる、または資格の適用が曖昧な場合には、あらかじめ入管に相談し、必要であれば変更申請を行うべきです。
資格変更をせずに働くと「資格外活動」に該当し、処罰対象になる恐れもあるため、慎重に判断する必要があります。
在留期限が3か月未満の場合の対応
転職時に在留期限が残り3か月を切っている場合は、「更新申請」の準備を早急に進める必要があります。
在留期間の更新は、在留期限の3か月前から手続き可能であり、基本的に本人が入管に申請する形となります。
更新手続きを怠ったまま在留期限を過ぎると、オーバーステイ扱いになり、強制退去や再入国制限の対象になる恐れもあります。
申請中であれば「特例期間」として引き続き日本に滞在できますが、余裕を持って行動することが重要です。
また、更新が認められるには「適切な就労先」「安定した収入」「法令順守」が求められます。転職先の労働条件も審査対象になるため注意しましょう。
高度専門職・特定技能など特例ビザの注意点
特例的なビザである「高度専門職」や「特定技能」には、転職時における独自の制限や条件があります。
- 高度専門職:ポイント制度に基づき在留資格が付与されているため、転職先の業務内容や年収によっては再審査が必要
- 特定技能:分野ごとに定められた試験・技能水準があるため、同一分野内での転職は可能でも、分野をまたぐ転職は再試験が必要な場合あり
特に特定技能1号では、転職先が「登録支援機関」と契約していることが義務となっており、支援体制の有無も重要な要素です。
これらのビザは、制度の特性上「自由な職種変更がしづらい」という点を理解しておく必要があります。
ビザの性質によっては転職そのものが難しいケースもあるため、早めの情報収集と専門家への相談がカギになります。
就労資格証明書の取得で転職をスムーズにする
証明書を取得すべきケース
「就労資格証明書」は、転職後の職務内容が現行の在留資格で適正かどうかを入管に確認してもらうための書類です。
必ずしも義務ではありませんが、取得することで新しい職場や入管への説明責任が明確になり、安心して働くことができます。
- 職種が微妙に変わるが、資格の範囲内か判断が難しいとき
- 企業がビザの適合性に不安を持っているとき
- 更新時に備えて明確な証明を得たいとき
この証明書は、転職直後〜更新申請の間で提出するのが一般的です。
雇用主・本人双方の安心材料になるため、可能であれば取得しておくのが理想です。
申請手順と必要書類
就労資格証明書の申請は本人が入管に提出する必要があります。申請から結果通知まで1〜2か月ほどかかるため、早めの準備が重要です。
申請手順は以下のとおりです。
- 入管の公式サイトから申請書類をダウンロード
- 必要事項を記入し、必要書類を添付
- 最寄りの地方出入国在留管理局へ持参して提出
主な必要書類は次のとおりです。
- 就労資格証明書交付申請書
- 雇用契約書の写し
- 会社概要(パンフレットや登記簿謄本など)
- 在留カード・パスポートの写し
書類の不備や記入ミスがあると審査が遅れる原因となるため、慎重に確認を行いましょう。
審査期間と結果通知の流れ
就労資格証明書の審査期間は、通常1か月〜2か月が目安です。
申請書類に問題がなければ、特に面接などはなく書面審査で完了します。
結果は、申請時に指定した方法で通知され、証明書は入管での受け取りが必要です(本人または代理人)。
この証明書は企業側への説明資料としても有効であり、「この職務は在留資格に合致している」と明示できる点が最大のメリットです。
更新や変更時の審査がスムーズになる効果もあるため、余裕がある場合は取得を強くおすすめします。
企業(受入れ会社)が行う採用・退職時の手続き
外国人雇用状況届出(ハローワーク)
外国人労働者を採用または退職させる際、企業側には「外国人雇用状況の届出」が義務付けられています。
この届出は、外国人が適法に就労しているかを把握するための制度で、雇用主に対し報告義務があります。
- 提出先:ハローワーク(管轄の職業安定所)
- 提出期限:雇用日または離職日の翌月10日まで
- 対象者:在留カードを所持する全ての外国人(特別永住者等を除く)
この届出を怠ると、事業主に対して30万円以下の罰金が科される可能性もあります。
企業としての法令順守の観点からも、確実に手続きを行うことが求められます。
労働契約書・雇用契約書の作成ポイント
外国人を雇用する際には、日本人と同様に労働契約書を作成する必要があります。
しかし、外国人特有の事情を踏まえた内容とすることで、誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
- 就業内容と勤務地を明確に記載(在留資格との整合性を重視)
- 使用言語:日本語に加えて英語や母国語でも併記するのが望ましい
- 就業時間・休日・賃金・社会保険などの労働条件を具体的に
- 契約期間と更新の有無を明記
とくに「職務内容」と「報酬の水準」は、在留資格の更新や就労資格証明の審査でもチェックされる重要な項目です。
外国人本人にも理解できるよう、やさしい日本語や翻訳の活用も検討するとよいでしょう。
社会保険・雇用保険の加入・喪失届
外国人を雇用した場合でも、日本人と同様に社会保険と雇用保険への加入が原則義務となります。
また、退職時には速やかに保険の喪失手続きを行う必要があります。
- 加入届:入社日から5日以内に年金事務所または協会けんぽへ提出
- 雇用保険被保険者資格取得届:入社日の翌月10日までにハローワークへ
- 喪失届:退職後5日以内(社会保険)、翌月10日まで(雇用保険)
手続きを怠ると、将来的に本人が失業保険を受け取れなかったり、企業側がペナルティを受けることもあります。
外国人だからといって特別扱いせず、「労働者」として同等に取り扱うことが基本方針です。
特定技能・介護ビザなど在留資格別の転職ポイント
特定技能1号・2号で転職する場合
特定技能の在留資格を持つ外国人が転職する場合は、同じ分野・業種内であることが大前提です。
たとえば、「外食業」の特定技能1号で就労していた人が、同じ外食業の別企業へ転職する場合は可能ですが、「建設業」など異なる分野への転職は認められていません。
さらに、以下の点も確認が必要です。
- 転職先が「登録支援機関」と契約していること
- 事前に「受入れ機関変更届出書」の提出が必要
- 支援計画の引き継ぎ内容も明示する必要がある
手続きの煩雑さから、転職は制度的に「慎重に検討するべき」立場にあるといえるでしょう。
不明な点がある場合は、支援機関や行政書士に早めに相談するのが安全です。
介護ビザでの転職手続き
「介護」の在留資格を持つ外国人が転職する場合、同じ介護業務であれば別の事業所への転職が可能です。
ただし、在留資格を取得した際の前提(職務内容や勤務条件)が大きく変わると、再審査が必要となる場合があります。
以下のような点に注意しましょう。
- 職務内容(介護業務に限定される)
- 勤務先が福祉施設・病院など介護資格を要する職場であること
- 雇用条件が在留資格の要件を満たすこと(常勤であること、適正な報酬など)
なお、「特定技能介護」と混同されやすいですが、在留資格としては別物なので、切り替えや手続きも異なります。
転職の際には、新しい勤務先に「外国人介護職員の雇用経験があるか」も確認すると、手続きがスムーズになります。
留学生・配偶者ビザからの転職時注意点
留学生や配偶者ビザの人が就職・転職する場合には、在留資格の「変更申請」が必須です。
たとえば、大学卒業後に就職したい留学生は「留学」→「技術・人文知識・国際業務」などへの切り替えが必要です。
また、配偶者ビザで就労していた人が離婚や死別により配偶者資格を失った場合、引き続き働くためには就労系の在留資格へ変更しなければなりません。
このようなケースでは、次の点に注意してください。
- 職務内容が変更後の在留資格に適合していること
- 収入や雇用条件が生活維持可能な水準であること
- 在留期限が迫っている場合は早めに手続きを開始すること
変更が認められるかは、本人の経歴・雇用先の信頼性など総合的に判断されます。
特に配偶者ビザからの変更は難易度が高いため、専門家のサポートを受けるのが安心です。
転職後14日以内にすべきこと
新しい勤務先情報の登録
外国人が転職した際は、入管に対して「新しい勤務先の情報」を届け出る義務があります。
この届出は「契約機関に関する届出」と同様、転職後14日以内に行う必要があり、前職の退職と新職の就業両方を申告する必要があります。
オンライン(e-Notification)、郵送、窓口のいずれでも提出可能ですが、期限を過ぎると違反と見なされるため注意が必要です。
在留カードに記載された在留資格の範囲内であるかも、あわせて確認しておきましょう。
在留カードの変更事項確認
転職後には、在留カードに記載されている情報に変更がないか確認しましょう。
たとえば、氏名や国籍はもちろん、在留資格や在留期間、勤務先などに変更がある場合は、速やかに更新手続きが必要です。
勤務先情報の変更自体は在留カードに直接記載されませんが、在留資格変更・更新の結果として、カードに新たな情報が反映される場合もあります。
なお、住所変更については市区町村役場に届け出ることが義務づけられています。
手続き漏れがあると、行政手続きで不利になることもあるため、定期的にカード記載内容を見直す習慣を持つと安心です。
税金・年金・健康保険の手続き
転職によって勤務先が変わると、税金・社会保険・年金に関する手続きも必要になります。
これらは主に企業側が行う義務がありますが、本人も仕組みを理解しておくと安心です。
- 所得税・住民税:転職先で「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し、年末調整対象に
- 健康保険・年金:社会保険加入が必要な企業であれば、自動的に厚生年金・健康保険へ加入
- 前職での退職証明:手続きの際に前職情報が必要なこともあるため保管しておく
転職のタイミングによっては、住民税が前職経由で支払われていたり、年末調整の対象外になったりする場合もあります。
不明点がある場合は、新しい勤務先の人事担当や市区町村窓口で確認しましょう。
よくある質問とトラブル事例
ビザ審査中に退職・転職した場合
在留資格の更新や変更の審査中に退職または転職した場合は、申請時に提出した雇用条件と実際の状況が変わるため、再申請や補足資料の提出が求められる可能性があります。
このようなケースでは、以下の対策が重要です。
- 退職の事実を速やかに入管へ届出
- 転職先が決まっている場合は、新たな雇用契約書を添えて申告
- 資格変更が必要な場合は速やかに再申請
審査中に大きな変更があると、在留資格の取り消し対象になるリスクもあるため、こまめに状況を入管に報告することが大切です。
届出を忘れたときのペナルティ
契約機関に関する届出などを怠った場合、日本の法律に基づいて罰則が科されることがあります。
主なペナルティは以下のとおりです。
- 行政指導:まずは注意喚起や指導の対象となる
- 在留資格の取消し:虚偽や不履行が重なると取り消される可能性あり
- 再入国制限:重大な違反があった場合、一定期間日本への再入国が認められないことも
うっかりミスであっても「知らなかった」では通用しないため、手続きの期限は必ずカレンダーやリマインダーなどで管理しましょう。
すでに期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く正直に申告し、オンラインまたは窓口で速やかに手続きすれば、重い処分を避けられることもあります。
在留資格取消しを防ぐためのポイント
在留資格の取消しは、外国人本人にとって生活基盤の喪失につながる重大な問題です。
このリスクを回避するためには、以下の点を常に意識しておくことが重要です。
- 届出や更新など、法定手続きを期限内に行う
- 在留資格に合致した業務内容を守る(無許可の副業や資格外活動に注意)
- 転職・退職などライフイベント時には、入管や専門家へ早めに相談する
特に、就労資格外の活動をしていたことが発覚すると、在留資格の取消しに直結する可能性があります。
日頃からルールを守って生活・就労することが、結果的に在留の安定につながります。
まとめ:外国人が安心して転職するための手続きチェックリスト
最後に、外国人が転職時に必要となる主要手続きとその期限・提出先を一覧にまとめました。
- 契約機関に関する届出(退職・就職)|14日以内|入管
- 就労資格証明書の申請|任意(必要に応じて)|入管
- 在留資格変更・更新申請|必要に応じて随時|入管
- 外国人雇用状況届出|翌月10日まで|ハローワーク
- 社会保険・雇用保険の加入・喪失手続き|入退社から5日〜10日以内|年金事務所・ハローワーク
このチェックリストを参考にすることで、転職時の抜け漏れを防ぎ、安心してキャリアのステップアップを目指せます。
不安や不明点がある場合は、一人で悩まず行政書士や専門機関へ相談することが、最良の対策です。
正しい知識と準備があれば、外国人の転職もスムーズに進められます。