外国人の転職で注意すべき13の重要ポイント【手続き・ビザ対応を完全網羅】
「日本で転職したいけど、自分のビザで大丈夫?」「手続きが多くて不安…」そんな悩みを抱えていませんか?
外国人が日本で転職する際には、ビザの条件や届出のタイミング、企業とのやり取りなど、日本人の転職とは異なる注意点が数多くあります。
手続きにミスがあると、最悪の場合、在留資格が取り消されてしまうことも。
そこで本記事では、外国人の転職に関する手続きを体系的にまとめ、特に注意すべきポイントを具体的に紹介します。
- 転職可能な在留資格の種類と判断方法
- 退職・内定時に必要な書類と届出の流れ
- 受け入れ企業が行うべき手続きと確認ポイント
- 本人が必ず行う届出と就労資格の確認方法
- 無職期間やビザ更新時のリスク管理
この記事を読めば、在留資格ごとの注意点から手続きの流れまでを理解し、安心して転職活動を進められるはずです。
外国人が日本で転職する際の基本ルール
転職が認められる在留資格と制限される在留資格
日本での転職が許されるかどうかは、保有している在留資格の種類によって異なります。
「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などは、同一分野であれば職場を変更しても基本的に問題ありません。
一方で、技能実習や留学ビザなどは、そもそも就労目的での活動に制限があるため注意が必要です。
- 技術・人文知識・国際業務:IT、通訳、マーケティングなどの職種で転職可能
- 特定技能:特定14業種内での転職に限られる
- 技能実習:原則として転職不可。ただし、労働問題などやむを得ない事情があれば例外あり
- 家族滞在・留学ビザ:基本的に就労不可。資格外活動許可が必要
自分のビザで可能な転職範囲がわからない場合は、入管窓口や行政書士への相談が確実です。
在留期間と転職タイミングのベストプラクティス
転職する際は、在留カードの有効期限をしっかり確認しておくことが重要です。
理由は、在留期限が迫っている状態で退職や転職をすると、申請書類の準備が間に合わず資格が失効してしまうリスクがあるからです。
たとえば、在留期限まで3ヶ月以上ある場合は、余裕を持って次の職場を探しやすく、入管手続きもスムーズに進められます。
一方で、残り期間が1〜2ヶ月の場合は、退職や内定後すぐに各種届出や更新準備を並行して進めなければならず、負担が大きくなります。
転職と更新のタイミングが重なる方は、事前に入管相談窓口で状況確認をしておくと安心です。
二回目以降の転職で追加される注意点
転職回数が増えると、在留資格の更新審査において、安定性や就労継続意欲が問われるようになります。
特に短期間での頻繁な転職は、「安定した職歴がない」と判断され、審査が厳しくなる可能性があります。
- 職務内容が在留資格に適合しているかを再チェックされやすくなる
- 企業側の手続き書類(就労資格証明書等)の提出負担が増す
- 更新審査で「今後の在留継続意思」に対する説明が求められる場合もある
2回目以降の転職を検討する際は、就労資格証明書を取得するなど、事前の対策がカギとなります。
転職手続き全体の流れとタイムライン
退職前に確認すべき書類と情報
転職を決意したら、まず最初に行うべきは「退職前の準備」です。
というのも、退職してからでは取得できない書類や、在職中にしか確認できない情報が多くあるためです。
- 雇用契約書や就業規則の写し(退職条件や違約金の有無など)
- 源泉徴収票(翌年の確定申告や住民税に必要)
- 社会保険の資格喪失日や保険証返却の方法
- 退職理由証明書(転職先企業やビザ更新時に要求されることも)
とくに雇用契約書は「業務内容」と「報酬の記載」がビザ更新に直結するため、写しを忘れず保管しておきましょう。
退職後に「何を提出すればいいの?」とならないよう、余裕のあるうちに必要書類を一通り準備しておくことが肝心です。
内定から入社までに必要なステップと届出
内定をもらってから入社するまでの間には、複数の法的・行政手続きが必要です。
まず、在留カードの内容(職務内容や雇用主)に変更が生じる場合は、原則として14日以内に「契約機関に関する届出」を行う必要があります。
- 内定後、雇用契約書の締結と労働条件通知書の確認
- 就労資格証明書の交付申請(職務内容が変わる場合)
- 前職の退職日と新しい勤務開始日の明確化
- ハローワーク等への保険関連手続き(企業側と本人の双方が必要)
「入社の準備=勤務初日だけのこと」と思い込まず、ビザや各種届出を見越した逆算スケジュールを立てることが大切です。
契約機関に関する届出の手順と期限
転職に際しては、在留カードの裏に記載されている「契約機関(=雇用主)」に関する変更届が義務付けられています。
この届出は、「旧雇用先の退職から14日以内」「新雇用先での勤務開始から14日以内」に、それぞれ出す必要があります。
提出方法はオンライン(入管電子届出システム)または紙での郵送となり、外国人本人が行う手続きです。
- 退職届:退職日から14日以内に提出
- 転職届:新勤務開始から14日以内に提出
- 届出先:出入国在留管理庁(オンラインまたは郵送)
うっかり忘れると、在留資格の取消しや更新拒否のリスクに直結します。退職・入社のスケジュールを管理しながら、カレンダーやリマインダーで対策しましょう。
在留資格別の具体的な対応フロー
技術・人文知識・国際業務ビザ保持者が行うべき手続き
この在留資格は、比較的多くの外国人ビジネスパーソンが保持しているビザです。
転職が認められる一方で、転職後の仕事内容が資格に適合しているかを厳しく見られます。
- 退職から14日以内に「契約機関に関する届出」を提出
- 新しい職場が同じ分野であれば「就労資格証明書」の取得が推奨
- 業務内容に変更がある場合は「在留資格変更許可申請」が必要
たとえば、通訳から営業職に変わる場合などは、変更許可の対象となることがあります。
「同じビザのまま働けると思っていたのに…」という事態を避けるため、変更要否は早めに確認しましょう。
特定技能外国人が転職するときの必須要件
特定技能ビザを持つ外国人が転職するには、「同一業種内での転職」と「受入れ機関が登録されていること」が前提条件です。
これは技能実習制度とは異なり、原則として転職が可能な点が特徴ですが、自由に職種を変えられるわけではありません。
- 新しい企業が「登録支援機関」かどうかを確認
- 転職前に出入国在留管理庁への「事前申請」が必要
- 転職後の業務内容が、特定技能14業種のうち1つに該当すること
書類不備や報告漏れがあると、ビザ取り消しの可能性もあるため、受入れ機関と密に連携をとることが不可欠です。
技能実習から特定技能へ移行する場合の注意点
技能実習から特定技能への移行は、最近特に増えている転職ケースの一つです。
しかし、この流れは単なる「ビザの切替え」ではなく、「制度変更によるステータスの変更」にあたります。
そのため、厳格な審査と、移行理由の説明が求められます。
とくに注意すべきは、過去の実習成績や在籍期間、技能評価試験の合格証明の提出などが必要な点です。
加えて、実習先とのトラブル(解雇、退職など)が原因での移行の場合、入管が慎重な審査を行うことがあります。
移行手続きを円滑に進めるためには、行政書士など専門家のサポートを受けるのが安心です。
受入れ企業が行う必須手続きとチェックポイント
在留カード・就労資格証明書の確認方法
外国人を雇用する際、企業側が最初に行うべき重要な確認項目が「在留カードの有効性」と「就労資格の範囲」です。
在留カードには、在留資格の種類・在留期限・就労制限の有無が明記されており、これを確認せずに雇用すると不法就労助長罪に問われる可能性があります。
- 在留カードの「在留資格」欄と「就労制限の有無」を確認
- コピーだけでなく、原本を必ず提示してもらう
- 必要に応じて「就労資格証明書」を本人に取得依頼する
なお、在留カードの真贋確認は入管庁が提供する「在留カード等番号失効情報照会」システムを活用することも可能です。
不安がある場合は、採用前の段階で専門家に相談し、法的リスクを最小限に抑えましょう。
外国人雇用状況届出書の提出フロー
外国人を雇用する企業は、労働者が雇用保険の対象となるかにかかわらず、雇入れまたは離職時に「外国人雇用状況届出書」をハローワークへ提出する義務があります。
この届出は、雇入れ時と離職時のそれぞれに必要で、原則として「事実発生日から14日以内」に行わなければなりません。
必要な情報には、氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留期限などが含まれ、在留カードの写しと併せて確認されます。
提出しない場合や虚偽の報告をした場合は、企業に対する行政指導や罰則の対象となるため注意が必要です。
雇用契約書・労働条件通知書の作成と交付
外国人を雇用する際も、雇用契約書や労働条件通知書の交付は日本人と同様に義務です。
とくに「外国人労働者への説明責任」を果たすために、内容は可能な限り母国語で用意するか、わかりやすい日本語での説明が求められます。
- 労働条件(賃金・労働時間・契約期間など)を明記する
- 契約書に双方の署名・押印を行い、原本と写しを保管
- 不明点があれば通訳や翻訳を介して正確に理解させる
「説明したつもりが伝わっていなかった」という状況は、後々のトラブルのもとになりかねません。
採用時にしっかりと書面で交付・説明を行うことで、信頼関係と法令遵守の両立が実現できます。
外国人本人が行う必須手続き
在留資格変更許可申請が必要かどうかの判断基準
転職先での職務内容が、現在保持している在留資格の範囲を逸脱する場合は、「在留資格変更許可申請」が必要です。
たとえば、技術職から接客業、または事務職から販売職などに職種が変わるケースでは、同じ資格では対応できない可能性があります。
申請が不要なケースもありますが、その判断はあくまで入管の判断に委ねられるため、自己判断は危険です。
事前に「就労資格証明書」を取得しておくことで、変更が必要かどうかの公式な確認が取れるため、積極的に利用するのがおすすめです。
就労資格証明書交付申請の具体的手順
新しい勤務先で働き始める際、仕事内容が現在の在留資格に適合しているかを確認する目的で「就労資格証明書」を取得することが推奨されます。
この証明書を持っていれば、在留資格更新時の審査がスムーズになるため、長期的にも大きなメリットがあります。
- 申請書(法務省ホームページよりダウンロード可能)
- 雇用契約書、会社案内、職務内容の説明書
- 在留カードの写し、パスポート
提出は入管(地方出入国在留管理局)に対して行い、審査期間は通常2週間〜1ヶ月程度です。
証明書が交付されれば、在留資格との適合性が公的に確認されたことになり、将来の更新や変更がより確実になります。
転職後14日以内に行う届出を忘れないための対策
退職や新しい勤務の開始後、「契約機関に関する届出」を14日以内に出すのを忘れてしまうケースは少なくありません。
しかし、この届出の遅れや未提出は、在留資格の取消しや今後の更新拒否のリスクにつながるため、非常に重大です。
うっかり忘れを防ぐには、スマートフォンのリマインダーやカレンダー機能を活用し、退職日・入社日の翌日から逆算して通知設定をするのが有効です。
また、入社初日に会社の人事担当者に「届出が完了しているか」を確認してもらうのも、良いダブルチェックの方法になります。
社会保険・税務・労務の実務対応
社会保険・雇用保険への加入手続き
外国人が正社員として働く場合、原則として日本人と同様に社会保険および雇用保険への加入が義務付けられています。
これには健康保険、厚生年金保険、雇用保険が含まれ、加入は企業が手続きを行うことになります。
- 加入対象:週30時間以上の労働、または契約期間が2ヶ月を超える見込み
- 必要書類:在留カード、マイナンバー、雇用契約書など
- 提出先:所轄の年金事務所、ハローワークなど
なお、加入後には被保険者証(健康保険証)が発行され、医療機関での利用や扶養家族の登録も可能になります。
「外国人は保険に入れない」と誤解しているケースもありますが、条件を満たせば日本人と同じ制度が適用されます。
源泉徴収票・住民税など税務関連の注意点
日本で働く限り、外国人であっても所得税や住民税を納める義務があります。
源泉徴収票は、年末調整や転職時の引き継ぎ、確定申告に必要な重要書類です。
退職時には前職から、入社後は現職から確実に受け取っておきましょう。
また、住民税は前年の所得に基づき翌年に課税されるため、退職後に「予想外の住民税請求」が届くケースもあります。
たとえば、6月から翌年5月までの住民税は前年の給与に対して課税されるため、退職時の清算や支払方法(分割・一括)についても把握しておくと安心です。
在留期間更新時に必要となる書類とスケジュール
在留資格の更新は、在留期限の3ヶ月前から申請が可能です。
更新に必要な書類は在留資格の種類や勤務先の業種により異なりますが、以下が一般的な必要書類です。
- 在留期間更新許可申請書
- 雇用契約書、会社概要書、源泉徴収票
- 納税証明書、住民票、出勤簿や給与明細(直近3ヶ月分)
審査期間は1〜2ヶ月程度かかるため、期限ギリギリではなく早めに準備を進めることがポイントです。
「気づいたら在留期限が迫っていた…」ということを避けるためにも、入社後すぐにスケジュールを立てておきましょう。
トラブルとリスクを避けるためのチェックポイント
届出漏れによる在留資格取消しリスクと対処法
外国人の転職において最も重大なリスクの一つが、「契約機関に関する届出の未提出」です。
入管法では、退職日や転職先の勤務開始日から14日以内に所定の届出を行う義務があり、これを怠ると在留資格の取消しの対象になることがあります。
特に転職回数が多い場合や、転職と更新申請が重なる場合など、うっかり忘れてしまいやすいポイントです。
対策としては、手続きのスケジュールをカレンダーで管理し、企業の人事担当とも情報共有しておくことが有効です。
「すでに期限を過ぎてしまったかも?」というときでも、速やかに提出すれば悪質と見なされることは避けられる可能性があります。
偽造在留カード・ブラック企業を見分けるコツ
就職先や採用候補者が法令に準拠していない場合、企業・外国人双方にとって深刻なリスクが伴います。
企業が注意すべきは「偽造在留カード」や、外国人が虚偽の経歴・ビザで就労していないかのチェックです。
一方、外国人側が注意すべきは、過酷な労働条件を強いる「ブラック企業」に就職しないよう見極めることです。
- 在留カードの真偽確認は、入管の公式サイトで番号照会が可能
- 面接時に「契約書を交付しない」「社会保険未加入」などを明言する企業は要注意
- 外国人への説明が不明確、違法な保証金制度がある場合も要注意
「おかしいかも」と感じたら、ハローワーク、労働基準監督署、外国人支援NPOなどに相談することをおすすめします。
無職期間が長い場合の影響とリスク回避策
退職後に転職先がすぐに決まらない場合、いわゆる「無職期間」が発生します。
この期間が長くなると、在留資格の更新審査において「日本に滞在する合理的な理由があるか」が問われることになります。
とくに3ヶ月以上の無職期間があると、収入証明や生活資金の説明などが必要となり、更新が厳しくなることも。
リスクを避けるためには、退職後すぐに転職活動を始めるとともに、以下の対策が効果的です。
- 就職活動の記録を残す(求人応募履歴、面接記録など)
- 生活費の内訳や仕送り証明を準備する
- 行政書士に相談して補足書類を作成してもらう
無職期間が長引きそうな場合は、早めに専門家へ相談し、更新申請のための備えを整えておきましょう。
まとめ:在留資格・手続きを正しく理解して、外国人転職を安全に進めよう
外国人が日本で転職する際には、日本人とは異なる法的義務と注意点が数多く存在します。
特に「在留資格に合った職種か」「届出期限を守っているか」「企業側・本人側での手続きが完了しているか」が重要なポイントです。
この記事で紹介した内容を押さえておくことで、ビザ取消しや不法就労といった重大なトラブルを未然に防ぐことができます。
- 在留資格ごとの転職条件を把握する(転職可否・就労範囲)
- 契約機関変更など、14日以内の届出を忘れずに行う
- 企業は在留カードや就労資格の真偽をしっかり確認する
- 本人も就労資格証明書や在留更新の書類を準備する
- 無職期間やブラック企業のリスク対策を事前に講じる
外国人の転職は複雑に見えますが、制度を正しく理解し、必要な準備を一つひとつ進めていけば、スムーズに実現することが可能です。
「転職しても大丈夫だろうか?」と不安な方こそ、この記事の内容を活用し、安心して新しいキャリアを切り拓いてください。